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晴漕雨読、ときどき山林

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黒々とした部分

「私の嫌いな10の人びと」 中島義道

須藤元気のあとに、これかい、ってかんじ。
というのも、真逆な内容。

「ありがとう」と心にもないのに感謝しているふりをする人は気持ち悪い、とか、いつも笑顔の人は不愉快、とか、そんなかんじ。
須藤元気が「ポジティブシンキングしよう」に対し、中島は、「前向きは気持ち悪い」と言っている。

始めは、なんてやなヤツ、って思いながら読んでいたのだけれど、考えてみると、みんながみんなポジティブな笑顔と感謝の気持ちの人だらけだったら、たしかに不気味かも、と思うようになった。
いろんなものの考え方があるのはある意味健全なことだと思う。
だからこの作者のように、違ったものの考え方がある、とわかっただけでも収穫なんだろうな。

実際、心の奥底にある黒々とした部分、自分にかまわないでくれ、そんなことはわかっているんだ、親切の押し売りはやめて、など誰もが隠し持っている気持ちを思い出した。

作者は学者ということもあって、ある意味子供らしい、正直さが純粋培養されているのだと思う。
社会的生活をしていたら婉曲なものの言い方とか、フールプルーフ(誰にでもわかりやすい)な思いやりなどが身につくのが普通だと思う。
それは正しいことがいいこととは限らない、と大人になるにしたがって学ぶからだろう。
それが大学、という特殊な環境で子供っぽさが許されているんだろうな。

そうそう、ちょうど前日に見た「夜回り先生」こと水谷修のテレビドキュメンタリーで感じた違和感の答えがわかったような気がした。
なんとタイムリーなことに、この本の中でも水谷氏のことが書かれていたのだ。

家族主義、かたぎ主義っていうのかな、自分の「正しさ」を妄信してる感じが耐えられないと中島は言っている。

100%の善人っているのかな?
どこか欠落している部分があるんじゃないのか・・。
と裏の部分を考えてしまう自分も哀しいのだけれど。

それにしても、作者がわたしの近くにいたら、いやだな。
案外おもしろいかもしれないけど。
by megumi510 | 2006-04-11 00:07 | 読書