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晴漕雨読、ときどき山林

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高田さんの大地の環境再生の講座を受講

高田造園高田宏臣さん の話を聴いてきました。
土中の環境改善を水と空気の動き、それによって生まれる菌の活動を広めている方です。

場所は、森と踊るが管理している八王子・恩方の森。

***

植物に知性があるということを、1930年にバーナード博士が発見した。
実際、木を切ろうとすると、植物が緊張する反応が現れる実験結果があるそうだ。

ブリティッシュコロンビア大学のシマード教授の発見も。
菌糸のネットワークがあって、地中に張り巡らせている。
鳥に運ばれた遠くのタネにもつながっているというから、驚き。

大地の環境再生をやっていくのに大事なのは、土地の状態を読むこと。
それは、
 ① 地形
 ② 植物の状態
 ③ 空気感
 ④ 土の硬さ


● 祠と土羽
昔の人は、地形のポイントを祠(ほこら)などで伝えている。
谷筋の入り口。
山頂。

祠がある場所は、「土羽(どは)」が必ずある。
谷筋なら、谷からちょっと上がったところ。
山頂なら一番高いところ。
盛り上がりがあり、木が植わっている。

その木を伐ってはいけない。
高さを作ることで空気が動く。
守らなければいけない木。

そこに生えている木は、乾湿を調整してくれる。
乾燥していたら、地中から水を吸い上げる。
大雨が降れば、水を染み込ませる。

● 実生苗と挿し木苗
戦後の拡大造林で植えられた苗と、それよりも前に植えられた苗とは別物。
実生(タネが落ちて育ったもの)の苗(天然の木)は、数メートルの直根が入る。
10mの木なら、一日に190リットルの水を吸い上げ、それを計算すると11万キロカロリーの放熱をしていることになる。

挿し木の苗はクローンなので、一斉に病気などになりやすい?

実生の苗はできるだけ直径の小さなポットで育てる。
そのまま置く。掘って埋めない。

● 人工林はよくて、広葉樹がOKなのか
人工林はけっして悪ではない。
皆伐して広葉樹を植えるのが、いいことでもない。
やり方によっては、荒れてしまう。
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方法が大事。

● 残さなくてはいけない木
沢沿いの木。→ 沢に土砂が流れ込むのを留める
尾根沿いの木。 → 
岩場。 土砂災害を防ぐ。もともと生えている木は岩の隙間を縫って細根を林、抱き込むように根が張る。

昔は伐って植林することはなかった。

● 竹
竹が生えるのは、土が竹の生える環境になっているから。
竹のエネルギーが強い証拠。

間伐をする場合は、邪魔にならない場所なら胸くらいの高さに伐る。
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腐りやすい。
深く穴があく。

● イノシシっていい仕事をする
地中の空気が詰まったところを掘って改善してくれる。
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斜面変換点沿いなど。
人間がやっておけば、イノシシは無闇に掘ったりしない。

● 作業道
抜けてるところ、獣道を歩く道にする。
道の周りに施業する。
道幅を広くしていく。

作業道の水切りは、等高線に平行に溝を掘る。
スコップなどで、軽くていい。
手間にならないこと、カンタンにすることが大事。
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轍を除いた部分は深めに。
溝に木の枝や葉などを入れる。

道沿いに水が走らないように。
横に溝を切ることで、途中で水が染み込むように工夫をする。

溝は、2.5~3メートル間隔。
大雨のときに水が湧き出る部分は、ツルハシで深めに掘る。

「晴耕雨読」とは
晴れた日は畑を耕し、雨の日は水の動きを読む。

道沿いの木は大事。
残す。

● 道具は軽いものを
ノコギリ
移植ゴテ
剪定ばさみ
ツルハシもしくはバール

いつも持ち歩いて、道を通るたびに植物をノコギリで叩いたり、溝を掘ったりする。

● 炭、埋炭
多孔質。
縄文時代の焼き畑の跡は、今でも土を豊かにしている。
谷沿い、尾根沿いの点穴に伐った竹や枝を焼いて、灰になる前に土をかけて埋める。

土が固くしまったところは、燃やすことでテラコッタ化して、早く安定する。
周りの木が枯れることはない。
燃えてもすぐに生えてくる。

溝や穴に炭を入れる。
土を積むときにも、炭、枝を層にして挟み込む。


● 歩く道
薄いラインを探す。→ だいたい獣が歩く道。
そこを歩く。
急斜面は、水道に足がかりを作って登りやすくする。
木を埋めて階段を作る。
木の奥側に枝、炭を詰めて、空気どおりをよくする。
隙間があることで、あとから根が入り込みやすくなる。

ヘリにはチャノキを植えると崩れにくくなる。
軽く刈るようにすると、根が細くなって崩どめになる。

ツバキもいい。

庭師修行時代、歩くのに3年と言われていた。
師匠は、土の硬さを足裏で感じて、足を置く場所を選んで歩いていた。

● 谷は大事
谷は埋めない。
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道を作りやすいからやってしまいがち。
水道を塞いでしまうと、大雨のとき地中に「水柱(みずばしら)」ができて、深層崩壊を引き起こす。
まっすぐ登る道は特に危ない。

このようにしてしまった場合は、谷筋に点々と穴あけて燃やして埋めるといい(埋炭)。

葉っぱの葉脈のように、谷筋が主脈、等高線に平行に入れる溝が側脈。

● 木の伐り方
集団で残す。
保山木は残す。
一気に環境を換えずに、点で、線で、観察しながら換えていく。
(失敗することもある)

抜くときは、大きく抜くと3年位で環境が一気に変わる。
竹は一気にやらない。

● 伐った枝や丸太を積む
斜面のまま積まない。
直角に掘り込みを入れる。(水が染み込む、空気が抜ける)

枝を絡みつけて積む。

● 沢
三面護岸、砂防ダムが沢の健全を壊している。
実験室の中と実際とは違うのに、斜面の角度とか、計算上の物理のことだけで土木工事をやってしまっている。

土中の水の流れを塞ぐことで、見えないところに水が滞り、周りの木々まで山の上へ遡って不健全にしている。
コンクリート建造物は、すぐには影響が出ない。

コンクリートの継ぎ目にヒビを入れる。
三面護岸の出口に、穴を掘る。
砂防の段差の上下に大きな穴を掘る。
側脈と沢が交わるところに穴を掘る。


***

<家の周りの環境改善>
● 家の裏の石垣
石垣の段下に溝を掘る。
間隔を空けて穴を掘る。傾斜をつけるように、流す方へ向かって徐々に深みをつける。
家の脇につなげて、流す。

雨樋からの水は、地中に管を通して段下の溝へ流す。
地中の管はところどころ穴を空けて、途中で水が染み込むようにもする。

屋根の下、滴る場所沿いに溝を掘る。

● 石段の上
植えた木、元気のないもの、土地に合わないものは抜く。
高木は残す。
チャノキは残す。

● 畑
獣害対策のネットは外す。
人間界と境界線を作ることで、気持ちも遮断してしまう。

畑の作物で生計を立てるのでなければ、ある程度ケモノが食べるのは許容する。
囲いを作るなら、小さく、作物の周りだけにする。

***

高田さんは、季刊雑誌「庭」に連載中です。



高田さんの本はこちら。


今、新しい本を執筆中とのことです。
待ち遠しいですね。

***

川の水を清く、流量を豊富にするには、森の健全が大事なのです。
山林のこと、コンクリートで塞がないこと、みんなに知ってもらいたいな。

森と踊るのズーやんさんにお声かけいただき、聞くことができました。
感謝。

by megumi510 | 2018-12-09 21:13 | 山しごと