「リンゴが教えてくれたこと」 木村秋則
sanoさんより貸していただいた本。
たまたま、農業関連の本を続いて読みました。
これはすごい本でした。
リンゴって無農薬で作るのはそれまで不可能だったみたいです。
害虫がわいたり、病気にかかったり。
でも、農薬は身体につくとただれたりする。
実際、山形の最上川で春先に漕ぐと、おなかをこわす人が続出。
まわりのリンゴ園で農薬散布が始まるからなのです。
毒でもある農薬を食品を育てるのに使うのがほんとうにいいことなのか?
そんなところから無農薬でリンゴ栽培を目指した筆者。
それがまた、壮絶。13年間は花も咲かず、実もならず。
それでもめげずに害虫を観察し、病気はリンゴの原種(バラ)を勉強し、といろんなアプローチをしてなんとかリンゴを作ろうと試行錯誤する。
自殺をしようと山へ入ったときに、山の土こそ健康な土なのだ、と発見する。
その間はコメや野菜を無農薬で作ることで(リンゴよりは無農薬で作りやすい)いろいろと勉強し、出稼ぎにいっていろんな人と出会ったり、違った業種で働いたり。
とにかくこの人は働き者です。
考え続けて、何が根源的なものなのか?を見つけてきたかんじ。
果物や野菜を作る話なのに、泣けちゃったりもします。
で、何が大事かというと、けっきょくは「愛」です。
リンゴの気持ちになること。
自分がリンゴだったら?・・と想像力をフル活動して野菜や果物を育てていく。
害虫だって最初こそ農薬がないとたかるけれど、益虫が出てちゃんとバランスがとられて最終的には害虫はつかなくなる。
自然の中でとられているバランスを尊重すること。
育てる人間は、成長しようとする植物を手助けするだけなのだ、と。
著者はネットなどはやらないだろうけれど、同じ考えの農家の方とネットワークができているところもすごい。
今は乞われて国内ばかりでなく、韓国でも農業の指導へ行ってるとか。
「無農薬で作った野菜は腐らない」という話も納得。
たしかに、実家山梨で父が作った野菜は、腐らない。
時間がたつと萎びるだけなのです。
スーパーで買った野菜はドロドロに溶けてしまうのですが。
不思議に思っていたんですよね・・。
食べ物は身体の中に入れて、しかも身体を作っていくもの。
それらはちゃんとしたもののほうがいいよね。
減反政策にも触れている。
高い農薬や農業機械を使う事なく、ちゃんと生産量を上げられる方法があるのだから、それらが浸透すればもっと利益を上げられるはず。
また、減反政策で作った米がちらっと出てくるんだけれど、「くず米」ってなってる。
農作物を作ることが食の基本、ということから離れた農家も多いのだろう。
(たまたま「日本は世界5位の農業大国」と併せて読んだので、産業としての農業、生きる元を生産する農業、と視点の違う考えが見えてよかった)
この本を要約することはできないです。
とにかくいろんな人に読んで欲しい。
配って歩きたいくらいです。
読んだ人の数だけ、気づかされるところがあるでしょう。
それにしても・・一緒にやってきた奥さんは大変だったろうな・・。
☆☆☆☆☆